慈善事業的側面のある事業における人事評価の難しさは営利企業の比ではないと経営学者のドラッカーが唱えています。
米国において人事評価制度が最も発達している企業はNPO法人であると言うのです。
彼はその理由として下記のようなNPO法人の特殊性を上げています。
- アメリカのNPO法人で慈善事業に携わる人間の多くが若い頃一流企業に務めて財を成した高齢者であること
- 利益を目標としていないため評価の指標となる数字が作りにくい
従事する社員の満足感が慈善性にあるためモチベーションの管理が難しく、評価制度に使える指標が抽象的にならざるを得ない。
そのためアメリカのNPOはとても詳細な評価制度と細かな面談によるモチベーション管理が必要となるのだそうです。
さて、このような評価に関する難しさは介護施設にも当てはまるところが多いと思います。
職員は慈善的なモチベーションで働いていることが多く、評価に関しても売上などの数値を用いにくいからです。
評価制度は職員をやる気にさせることも可能ですが、逆に社員のモチベーションを下げる可能性を秘めています。
社員の納得できるような評価制度と報酬の制度を用意しないと一気にやる気を無くしてしまうなんてことになりかねません。
今回はそんな介護事業者の評価制度について考えてみたいと思います。
介護職員の評価制度
介護職員の評価に関しては数値で表すことが非常に難しいです。
そして往々にして彼らは介護のやりがいをご利用者様が如何に喜んでくれるかに重きをおいています。
下手をすると「私は会社の売上のために介護しているわけなじゃない」とか「お金のためにやってるんじゃない」などと言われてしまいます。
彼らが満足しかつ会社の売上につながるような評価制度を作るのは非常に難しいです。
よく介護職員に対して使われる指標として取得資格が利用されることがありますが、介護系資格は介護福祉士が最高峰に位置しており(認定介護福祉士という上位資格が要されましたが民間が運用しているせいかあまり広まっていません)それ以上の資格が用意されていません。
2017年度末の時点で介護職の従事者は200万人、そのうち介護福祉士の取得者が100万人超ですので半数以上が介護福祉の資格を持っていることになります。それでは評価制度として利用することはできません。
そこで現場での介護技術のレベルを評価制度に取り込むことが望まれています。
そうすれば、職員は技術を伸ばすために切磋琢磨することで更にご利用者様の喜びにも繋がります。
それを実現させるためには介護技術を体系化し、レベル分けを行わなければなりません。
これは自分たちでやってみるととても難しい作業です。
そこで私の施設ではキャリア段位制度を導入しています。
下記の記事を見ていただきたいのですが、ちょうど介護技術を取り入れた評価制度の導入のために作られた制度です。
介護技術ごとにレベルが1~7まで設定されていおり、技術の内容もわかり易い言葉で記述されています。
目標の設定や評価も現場でのOJTの中で可能ですのでそう面倒でもありません。
レベルごとに給与の加算額を設定すればレベルアップへのモチベーションにもつながるはずです。
管理者の評価制度
さて、管理者の評価制度に関しては売上を外すことはできません。
ですから管理者に任命する人間は現場の管理能力だけで判断してはいけません。必ず売上についても責任を持てる意識のある人間でなければなりません。
しかし、売上だけを追求しすぎてしまうのもモチベーションを下げしまう結果になってしまいます。
管理者には面談による目標設定と目標達成度による評価を行うべきです。
経営側と管理者本人の思いをお互いの合意のもとで目標設定に入れることができます。
また、目標設定の中に売上目標を入れることで売上に対する責任をもたせることも可能です。
目標設定シートなどを使って半年程度ごとに面談を設定しましょう。
その際にできるだけ結果が数値化できる項目を目標に設定するように注意します。
結局目標が達成できたのか否かを判断しづらくしては意味がありません。
ご利用者様の満足度を調査するために5段階評価のアンケートを行ったり、職員の定着率を目標に設定するなど具体的な数値化ができる方がいいです。
目標の達成度を鑑みて賞与や昇給を考えることができます。
【その他の経営者の仕事についてはこちら】