私は以前に介護事業者に対する金融業を行っていた経験があるので、介護事業所が潰れていくさまを間近で見たことが何度かあります。
よく新聞やテレビなどを通して倒産情報を目にすることがあるかと思いますが、その際は必ず民事再生法と手続きに入ったとか、会社更生法が適用されますなどという報じられ方になっているかと思います。
大企業の倒産
民事再生法に関しては借金などの負債に関して一旦整理して、会社を立ち直らせるための対策を旧経営陣主体になって考えると言うものです。
この場合株式は維持されることが多いです。
また、会社更生法は旧経営陣は全て排除され、裁判所の決めた管財人が主導して整理が行われます。
株式も100%減資されることが多く、責任と取るステークホルダーが多数存在することになります。
守られるのは社員や下請けの企業などということになります。
立ち行かなくなった会社を一気に潰してしまわず、こういった処理を行う理由は大企業は多くの社員や取引先、利用している一般消費者など倒産による影響が広範囲に渡ってしまうことにあります。
取引先の連鎖倒産や雇用不安が起きれば日本経済全体に影響が出てしまう可能性があります。
こういった場合例え税金を投入してでも守らなければならない会社であるということなのです。
ですから倒産といっても実際会社が解散して離散するということではないのです。
中小企業の倒産
一方、中小弱小企業に関しての倒産は、
会社組織もなにも全てが消滅してしまうことが多いです。
会社にとって倒産の引き金となることはなんだと思いますか?
これは私が見てきた介護事業所の全ての事例に当てはまるのですが、これをもって倒産が決まったと経営者が認識をするのが「従業員が次々にやめていくさまを見る」ことなのです。
ある訪問介護事業所の経営者の話です。
赤字が続いていましたが、どんなことがあっても諦めずに資金繰りのために奔走していた経営者でした。
しかしある日、事務所に戻ると社員が誰もおらずパソコンやテレビなどもなくなっていました。
かわりに机の上に『給料の代わりに備品を持って帰ります』という置き手紙を見つけた時に、全ての力が抜けその場に倒れ込み、倒産を決めたという話があります。
他の事業所でも従業員が給料の支払いが危ないかもしれないという噂が回ってしまい、一斉に職員に辞められてしまったこともありました。
そうなると利用者がいてもサービスすることもできず、新しい従業員を雇うこともできないの諦めるしかなくなります。
倒産までにたどるルール
倒産までに至るよくあるルートを説明しましょう。
売上が立たず、資金繰りが悪化してくると必ず最初に手を付けるのが、社会保険料や税金などの支払いです。
これらは会社側から出向いて支払いいく類の債務になりますので、滞納につながりやすいです。
滞納が溜まっていよいよ年金事務所や税務署から通知が来るようになると、家賃の滞納を考えるようになります。
また、銀行の返済に関しても猶予を求めるかもしれません。
ただ、銀行の返済スケジュールを一度でも変更すると、今後借り換えや借り増しを行うことができなくなるというプレッシャーからか銀行への相談は最後の手段にだと考える経営者も多いです。
ここまで来ても収益が改善できない場合、いよいよ色々なところにほころびが見えてきます。
経営者の保険が解約されたり、車を売却したり、などなど経営者の見た目にも変化が見られるようになります。
少々質の低い金融業者からの借り入れも始まり、返済に追われる日々になり営業活動どころではなくなります。
私はこのへんまで来た時点で諦めることを勧めています。
ここまで来て復活する事はほぼないです。
これ以上ドツボにはまると私生活まで影響が出て取り返しがつかなくなります。
そうしているうちに、ついにその日が来ます。
いつもどおりの介護給付費の入金日、給与や待ってもらっていた消費者金融への支払いのために朝から銀行の窓口に駆け寄ると、なんと口座には一銭の金も入っていないのです。
顔を真っ青にして会社に戻ってみると、郵便物の中に裁判所からの通知が・・・
それを出したのは年金事務所でした。
甘く見てたがこんな手を売ってくるとは・・・年金事務所に電話してももう遅いです。
担当者は「滞納額と延滞金引いた分20万円ほどを後日お返しします」などと冷静に言ってきます。
そして給料が払えずに職員が逃げ出していく・・・
これは倒産の流れの一例ですが、介護事業所のとどめを刺すのは意外と年金事務所や税務署が多いです。
また、国保連から介護給付の振込先である銀行などが資金を回収してしまうと言うパターンも多く見られます。
その際に狙われるのは必ず『介護給付費』です。